バックロードホーン設計の基本的な考え方を掲載しております。若いころにお金が無くて、長岡鉄男さんのバックロードホーンに憧れていました。考え方を変えて低音を低い側に延ばす設計です

空と文字(MOUNTAIN)

設計思想



なぜバックロードホーンか?
 私が高校生の頃、バスレフばかり作っていました。技術が無く、木工用電動工具が無かったから、簡単な箱しかできなかったのです。コーラルのFlat 8、8F60、ダイヤトーンP-610B、フォステクスFE-103、163、しまいにはエレクトロボイスSP-12C+T35+X36の超大型バスレフまで作りました。でも、それらはスピーカーユニットの音しかしない、つまらない音でした。

 それに気付いたのが、ほんの5年前、松本のロイヤルオーディオで聞いたB&Wノーチラス801を聞いたときでした。スピーカーの存在を感じさせず、そこで本当に演奏しているように聞こえました。私はここで本当のオーディオに出会いました。

 しかし私にはお金がありませんでした。自作であの音を実現するとなるとかなり難しい、なぜならバスレフだとユニットの音しか出ないため、素性の良い高価なユニットを使わざるを得ません。どうやったら安価なユニットを使ってあの音が出るか・・・、と考えてみました。音楽信号を忠実に再現できるユニットには高価なものばかりではないことに気が付きました。磁気回路が強力であれば信号に忠実に、しかも今のCDなどのハイスピード音源に対しても追随するはずだ、と考えてフォステクスのFE208SやSS、FE168ESなどを使う事を考えてみました。しかし、これらのユニットでは磁気回路が強力な分、中高音域の音圧は上がるのですが、低域はリニアには音圧が増加しないため、結果的にハイ上がりの特性になっています。そこでバックロードホーン方式の出番になるわけです。故長岡先生の教科書に沿って早速設計してみました。


バックロードで重低音再生
 計算してみて驚いたのですが、長岡さんやメーカーが推奨するホーン長さでは、せいぜい40Hzまでの再生がやっとである事がわかりました。 重低音を得るために、私のホーンはすべて3m以上の長さとなっております。また、中低音でのコブの無いフラットな再生音を得るために、クロスオーバー周波数をかなり低く設定しております。

生演奏のようなハイスピードサウンド
 バックロードホーンに合うユニットは共振の鋭さQ0が小さい、foの大きな、すなわち低音がダラ下がりであまり低音の出ないものが好まれます。バックロード向けのスピーカーユニットでは磁気回路強力にしてコーン紙を軽くしてあり、低音出にくくなっています。このようなユニットをバックロードホーンに用いると、ホーンの低音とユニットの低音が重なる事が無くなるため、好都合なのです。

 一方、このような磁気回路の強力な振動系の軽いユニットでは、入力信号に対するコーン紙の応答が速く、ハイスピードサウンドを再生できます。ですので、バックロードホーンでは、中高音は目の覚めるハイスピードサウンド、低音は重低音まで再生できる、優れたシステムを構築できるのです。

 バックロードでは、低音がホーン長さ分だけ音が遅れて出るため、低音のスピード感が密閉箱やバスレフに劣るのでは?と思われるかもしれません。バックロードを自作するまで、私もそう思っていました。 しかし実際には、バックロードに用いるユニットは振動系が軽く、しかも磁気回路が強力なため、密閉箱やバスレフに用いる振動系の重いユニットと遜色ない応答となる事がわかりました。大口径振動板を用いた一昔前のウーファーに比べれば、ずっとスピードのある低音だと思います。最近では、メーカーでもこのことに気付いて、高級なスピーカーでは小口径ウーファーを複数用いて、低域のトランジェントを改善しています。 例えばJBLの38cmウーファなどではコーン紙が40g~50gもあるのに、フォステクスのFE-108ESⅡではわずか3.5gでしかも磁気回路が超強力なランタンコバルトです。ですので当然応答はそれ単体で圧倒的にすばやく、音道のでの低音の遅れを十分カバーしております。また、大きなウーファでは分割振動が無視できず、ひずんだ低音になります。その点小口径でも低音再生できるバックロードホーンは有利であります。

 本当かな?と思われる方、市販のスピーカーでは音が前に出てこない、と感じられている方、是非一度御試聴ください。目が覚めます。

一般的なユニットを使って
 設計しているうちに、密閉箱やバスレフ箱で使われるユニットを用いても、自然な音質となるように設計できる事がわかってきました。高級ユニット、ロイーネRA160を活かしたTH-2を作成しました。
また、ダイヤトーンビンテージ P-610Bを使ったTH-3は、ナチュラルでしかもバスレフでは難しい30Hz以下の重低音まで再生できました。
 お手元で眠っているユニットを使ってバックロードを造ってみたいと思っている方、是非ご連絡ください。

フロントロードホーン
 小型ユニットを使った場合、幸いな事にフロントホーンを容易に設計できます。これを装着する事により、ユニット前面から出た音を、リスナーに直接送り届ける事が出来るようになります。前代未聞の超ハイスピードサウンドを実現できます。サックス、シンバルは突き刺さり、ピアノは叩き付けます。



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